低い(読み)ヒクイ

デジタル大辞泉 「低い」の意味・読み・例文・類語

ひく・い【低い】

[形][文]ひく・し[ク]

㋐物が地面などから空間的に近い位置にある。「鳥が―・く飛ぶ」「雲が―・く垂れ込める」「天井の―・い部屋」⇔高い
㋑垂直方向への伸びぐあいが小さい。基準となる面からの出っ張りが小さい。「背が―・い」「鼻が―・い」「―・いかかと」「―・い姿勢」⇔高い
音量が少ない。また、音声の振動数が少ない。音域が下である。「スピーカーの音を―・くする」「男性の―・い声」⇔高い

物事の程度が、他よりも下である。また、水準以下である。「―・い地位に甘んじる」「不当に―・く評価される」「政治に対する関心が―・い」「人間の程度が―・い」⇔高い
㋑現実的で、理想を求めるなどの意欲に欠ける。また、俗っぽい。「志が―・い」「望みが―・い」「話の次元が―・い」⇔高い

数値数量が小さい。また、比率割合が小さい。「水温が―・い」「犯罪年齢が―・くなる」「回答率が―・い」⇔高い
㋑金額が小さい。また、全体の金額に対する支払うべき費用などの割合が小さい。「賃金が―・い」「コストを―・くおさえる」⇔高い
[派生]ひくさ[名]
[類語](1㋑)小さい小さめ矮小わいしょう寸足らずちんちくりんしょう小さなちっちゃいちっぽけ細かい微小微細細微細密緻密ちみつ細か小振り小形小柄小作り小粒豆粒芥子けし群小最小小規模細細ほそぼそ零細ちんまりこぢんまりちまちまミニ/(3㋐)下等下級低級低位低次低次元低劣取るに足りない/(4小さい少ない・小さめ・少なめ低度低調少し少しく少少ちょっとちょいとちとちっとちょっぴりいささかいくらかいくぶんやや心持ち気持ち多少若干二三少数少量僅僅わずか数えるほどたったただたかだかしばらくなけなし手薄内輪軽少軽微微弱微微微少僅少些少最少微量ちびちび一つまみ一握り一抹一息紙一重雀の涙鼻の差残り少ないちょこっとちょこんとちょっこりちょびちょびちょびっとちょぼちょぼちょろりちょんびりちょんぼりちらり爪の垢小口ささやか寸毫プチ

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精選版 日本国語大辞典 「低い」の意味・読み・例文・類語

ひく・い【低】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙
    [ 文語形 ]ひく・し 〘 形容詞ク活用 〙 相対的に、上下関係として把握(はあく)できる事柄で、下位にあるさま。
  2. [ 一 ] 空間的に下の方にあったり、下の方まで広がってあったりするさま。
    1. 下の方にある。下の方に位置している。
      1. [初出の実例]「下はひくいとよむかひきいことを云には川や沢を云ぞ川さわよりひくい所はないぞ」(出典:玉塵抄(1563)二三)
    2. ある基点からの盛り上がりや突き出しの程度が少ない。下からの長さ、隔たりが小さい。「鼻が低い」
    3. 丈が短い。
      1. [初出の実例]「セイノ ficui(ヒクイ)モノ」(出典:ロドリゲス日本大文典(1604‐08))
    4. 態度、物腰などが謙虚である。丁重である。
      1. [初出の実例]「心は低(ヒク)くせよ身を惜しむな、其身に合ひたる労働ならば夫れ相応に世話しても取らすべしとて」(出典:やみ夜(1895)〈樋口一葉〉三)
  3. [ 二 ] 価値や序列が下位にあるさま。
    1. 身分や地位、生活程度などが下位にある。
      1. [初出の実例]「位のひくいはやすい玉を持ぞ。圭はたかい玉なり、宰相が持つ玉なり」(出典:玉塵抄(1563)四四)
    2. ( 抽象的な事柄について ) その力量知力・思想や機能などの点で劣っている。一定の知的水準に達していない。「見識が低い」「低い次元の話」
      1. [初出の実例]「ニクシンワ ficuqi(ヒクキ) コトヲ モトムル トキンバ、ワガミト トモニ カッセンシ ワレト ワガミヲ ヲモニト ヲモウ ナリ」(出典:コンテムツスムンヂ(捨世録)(1596)三)
    3. 体裁、構成、調子などの張り、緊張感に乏しい。説得力に欠ける。「調子の低い演説」
  4. [ 三 ] 数量が少ないさま。
    1. 金がかからない。廉価である。安い。
      1. [初出の実例]「ヒクイ 低価なること」(出典:公家言葉集存(1944)八)
    2. 温度、湿度、硬度緯度などの上下強弱などの度合で、下の方、弱い方である。
      1. [初出の実例]「天のめぐりは北高く南卑く」(出典:制度通(1724)一)
    3. 音や声が小さくて弱い。また、低音である。音や声の振動数が少ない。
      1. [初出の実例]「コエガ hikui(ヒクイ)」(出典:和英語林集成(初版)(1867))
    4. 射芸で、張弓の弦と弓との距離が狭い。

低いの語誌

古く「低」の意には漢文訓読文では「ひきなり」、平仮名文では「みじかし」「ちひさし」などが用いられていた。平安末ごろに「ひきし(ひきい)」が成立したが、「ひきし」の変化した「ひくし(ひくい)」が一般化するのは室町時代末以後である。

低いの派生語

ひく‐げ
  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙

低いの派生語

ひく‐さ
  1. 〘 名詞 〙

低いの派生語

ひく‐み
  1. 〘 名詞 〙

ひき・い【低】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙
    [ 文語形 ]ひき・し 〘 形容詞ク活用 〙
  2. ひくい(低)[ 一 ]
    1. [初出の実例]「額いたうはれたる人の、まじりいたうひきく、顔もここはと見ゆる所なく」(出典:類従本紫式部日記(1010頃か)消息文)
  3. ひくい(低)[ 一 ]
    1. [初出の実例]「山下(ヒキ)しと云へ共」(出典:三国伝記(1407‐46頃か)一一)
  4. ひくい(低)[ 一 ]
    1. [初出の実例]「㒵大に、せいひきかりけり」(出典:平家物語(13C前)八)
  5. ひくい(低)[ 二 ]〔法華経音訓(1386)〕
  6. ひくい(低)[ 三 ]
    1. [初出の実例]「昔の、竹祖が、百余年にして、其の顔色が、二十(はたち)ばかりの、人の、やにありしをも、年臘が、ひきき人ぢゃとて、きらわれたとぞ」(出典:三体詩素隠抄(1622)二)

低いの語誌

上代、中古には、語幹末音節がイ列音のク活用形容詞は認められないところから、平安時代末から鎌倉時代初にかけての成立と考えられる。一方、平安時代には、形容詞「ひくし」の例はなく、形容動詞「ひきなり」がある。「ひきやか」「ひきひと」「ひきやま」の「ひき」はこの形容動詞の語幹と解すべきである。

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