若干(読み)ジャッカン

デジタル大辞泉 「若干」の意味・読み・例文・類語

じゃっ‐かん〔ジヤク‐〕【若干】

《「干」を「一」と「十」に分解して、一のごとく十の若しの意から》はっきりしないが、それほど多くはない数量を表す。いくらか。少しばかり。多少。「若干の金を借りる」「若干問題がある」「若干名」
多少たしょう[用法]
[類語]幾らか幾分なけなし少し少ないちょっと少しく少少ちょいとちとちっとちょっぴりいささかやや心持ち気持ち多少二三少数少量僅僅きんきんわずか数えるほどたったただたかだかしばらく低い手薄少なめ内輪軽少軽微微弱微微微少僅少きんしょう些少さしょう最少微量ちびちび一つまみ一握り一抹一息紙一重すずめの涙鼻の差残り少ないちょこっとちょこんとちょっこりちょびちょびちょびっとちょぼちょぼちょろりちょんびりちょんぼりちらり爪のあか小口ささやか寸毫すんごうプチほのか幾ばくせいぜいたかが微塵みじん些細ささいまばらほんのあるかなきか一縷いちる心ばかりしるしばかり形ばかり

そこば‐く【若干/幾許】

[副]
いくらか。いくつか。そくばく
運動費の―を寄附した事もあった」〈広津和郎風雨強かるべし〉
「―選ばれたる人々に劣らず御覧ぜらる」〈宇津保・吹上下〉
数量の多いさま。たくさん。多く。
「寄手―討たれにければ、赤松わづかの勢になって」〈太平記・八〉
程度のはなはだしいさま。たいへん。非常に。
「―広き天竺」〈今昔・五・四〉
[類語](1幾らか少ない少し少しく少少ちょっとちょいとちとちっとちょっぴりいささかいくぶんやや心持ち気持ち多少若干二三少数少量僅僅わずか数えるほどたったただたかだかしばらくなけなし低い手薄少なめ

そくば‐く【若干/幾許】

[副]そこばく」に同じ。
「―の油を取りて」〈紅葉金色夜叉

そこ‐ば【若干/幾許】

[副]そこばく」に同じ。
かむからや―貴き」〈・三九八五〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「若干」の意味・読み・例文・類語

そこば‐く【若干・幾許】

  1. 〘 副詞 〙 ( 副詞「そこば」に副詞語尾「く」の付いたもの。名詞的に用いられる場合もある )
  2. 数量などを明らかにしないで、おおよそのところをいう語。いくらか。いくつか。
    1. [初出の実例]「爾許(ソコハク)」(出典:四分律行事鈔平安初期点(850頃))
    2. 「源氏殿上ゆるされて、御前にめして御覧ず。そこばく選ばれたる人々に劣らず」(出典:宇津保物語(970‐999頃)吹上下)
  3. 数量の多いさま、程度のはなはだしいさまを表わす語。多く。たくさん。はなはだ。たいそう。
    1. [初出の実例]「そこばくの捧げ物を木の枝につけて」(出典:伊勢物語(10C前)七七)
    2. 「そこばく挑みつくし給へる人の、御かたち・有様を見給ふに」(出典:源氏物語(1001‐14頃)行幸)

若干の語誌

( 1 )「そこば」に対する「そこばく」は「ここば」に対する「ここばく」の関係に等しい。
( 2 )平安時代には、数量の多いさまを表わす語として、「そこら」「ここら」が和文に用いられるのに対して、「そこばく」は「若干」等の訓読語として用いられた。和文では、「ここら」と「そこら」に「こ━そ」の指示領域に関係した使い分けが見られるが、訓読文では「そこばく」が専ら用いられ、多く「そこばくの」という形で連体修飾語となる。
( 3 )平安時代末から中世にかけては「ここら」「そこら」の用例数は次第に減るが、「そこばく」は引き続き用いられ、「そくばく」「そこそばく」といった形も生じた。


じゃっ‐かんジャク‥【若干】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「干」を分解して「一」と「十」にし、一の若(ごと)く十の若しの意からという。副詞的にも用い、あまり多くはない数量や高くはない程度で、定まらない場合にいう ) いくらか。少しばかり。そこばく。若許(じゃっきょ)
    1. [初出の実例]「何ぞ若干の財物を虜領せしめ」(出典:将門記(940頃か))
    2. 「野呂も〈略〉若干あをざめてゐました」(出典:ボロ家の春秋(1954)〈梅崎春生〉)
    3. [その他の文献]〔礼記‐曲礼〕

そくば‐く【若干・幾許】

  1. 〘 副詞 〙 ( 名詞的に用いられる場合もある ) =そこばく(若干)
    1. [初出の実例]「天国排開広庭皇子、即天皇位(あまつひつき)しろしめす。時年(みとし)若干(ソクハク)」(出典:日本書紀(720)欽明即位前(寛文版訓))
    2. 「廻りける勢に、後陣を破られて、寄手若干(ソクバク)討れにければ」(出典:太平記(14C後)八)

そこ‐ば【若干・幾許】

  1. 〘 副詞 〙そこばく(若干)
    1. [初出の実例]「はねかづら今する妹は無かりしをいづれの妹そ幾許(そこば)恋ひたる」(出典:万葉集(8C後)四・七〇六)

そこば‐こ【若干・幾許】

  1. 〘 副詞 〙 「そこばく(若干)」の変化した語。〔大般若経字抄(1032)〕

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普及版 字通 「若干」の読み・字形・画数・意味

【若干】じやくかん

いくらか。いくそばく。不定の数。〔礼記曲礼下〕天子の年を問はれたるときは、對(こた)へて、之れを聞く、始めて衣をして干尺と曰ふ。

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