日本大百科全書(ニッポニカ) 「川崎長太郎」の意味・わかりやすい解説
川崎長太郎
かわさきちょうたろう
(1901―1985)
小説家。神奈川県生まれ。中学中退。家業の魚屋を手伝ったりするかたわら、『民衆』の同人になり、詩などを発表したりした。1922年(大正11)上京、翌年岡本潤(じゅん)らと詩誌『赤と黒』を創刊し、アナーキーな詩を発表していたが、関東大震災後、無政府主義の運動から離れ、25年、徳田秋声(しゅうせい)の世話で私小説『無題』を発表して文壇に認められた。その後プロレタリア文学の台頭などのために長らく不遇であったが、第二次世界大戦が終わって、『抹香町(まっこうちょう)』(1950)などの小田原の娼婦(しょうふ)との交渉を素材とした作品を書き、ブームを巻き起こすに至った。私小説に徹した作家の一人である。
[大森澄雄]
『『川崎長太郎自選全集』全5巻(1980・河出書房新社)』▽『大森澄雄著「川崎長太郎」(『私小説作家研究』所収・1982・明治書院)』