全い(読み)マッタイ

デジタル大辞泉 「全い」の意味・読み・例文・類語

まった・い【全い】

[形][文]まった・し[ク]《「またし」の音変化》
完全である。完璧かんぺきである。
親子の愛を―・くして美しい家族的生活をする」〈漱石吾輩は猫である
安全である。無事である。「―・きを得る」
[類語]完全完璧かんぺき万全十全両全満点金甌きんおう無欠完全無欠百パーセントパーフェクト全く文句なし大丈夫無傷間然かんぜんする所がない水も漏らさぬ非の打ち所がない

また・い【全い】

[形][文]また・し[ク]
完全である。欠けたところがない。まったい。
「―・きみけしのごとしき」〈・中〉
無事である。まったい。
「わが命の―・けむかぎり忘れめやいや日にけには思ひますとも」〈・五九五〉
正直である。律義である。
「人にあなづらるる物…余り―・き人」〈仮・犬枕
穏和である。おとなしい。
「―・い顔してつとめる狼あり」〈洒・浪花色八卦〉

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精選版 日本国語大辞典 「全い」の意味・読み・例文・類語

また・い【全】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙
    [ 文語形 ]また・し 〘 形容詞ク活用 〙
  2. 事物・事態が不足なく、または、欠点きずがなく完全である。全部が整っている。完全である。完璧である。不都合のない。まったい。
    1. [初出の実例]「唯し菩提樹下のみ堅く全(マタ)くして振ひ裂け不」(出典:東大寺諷誦文平安初期点(830頃))
    2. 「いとまたくすきまなき心もあり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)東屋)
  3. 生命・肉体がそこなわれず完全である。無事である。別条がない。まったい。
    1. [初出の実例]「命の 麻多祁(マタケ)む人は 畳薦(たたみこも) 平群(へぐり)の山の 熊白檮(くまかし)が葉を 髻華(うず)にさせ その子」(出典:古事記(712)中・歌謡)
  4. 人の性格が正直である。律義である。誠実である。まったい。
    1. [初出の実例]「公界なるもののまたからう者に云つけてをかうぞ」(出典:百丈清規抄(1462)二)
  5. おとなしい。柔和である。
    1. [初出の実例]「六四は隂得位てまたい女のやうな人ぢゃ程に」(出典:京大国文研究室本周易抄(1477))
  6. 馬鹿げている。愚鈍である。
    1. [初出の実例]「其はまたい、そちゃたりうたりう」(出典:咄本・昨日は今日の物語(1614‐24頃)上)

まった・い【全】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙
    [ 文語形 ]まった・し 〘 形容詞ク活用 〙 ( 形容詞「またし」の変化したもの )
  2. またい(全)
    1. [初出の実例]「血のまったいと云はきれぎれではなうて生之をひいて候と云事を神に申すぞ」(出典:古活字本毛詩抄(17C前)一三)
  3. またい(全)
    1. [初出の実例]「片手は折たれども、命はまったかりけり」(出典:十訓抄(1252)六)
  4. またい(全)
    1. [初出の実例]「象は陰でいて孚を行て衆人がまったい孚あるとせば悔はあるまいぞ」(出典:土井本周易抄(1477)四)

全いの補助注記

( 1 )連用形は「まったくす」「まっとうする」などの形で用いられるほか、語源意識が薄れたためか、江戸時代には、「まっとう」の形で形容動詞としても用いられるようになる。
( 2 )連用形「まったく」は現在、副詞化して用いられ、連体形「まったき」は連体詞化して用いられるので、ともに便宜上別項とした。→まっとうまったきまったく

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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