例えば(読み)タトエバ

デジタル大辞泉 「例えば」の意味・読み・例文・類語

たとえ‐ば〔たとへ‐〕【例えば】

[副]
前に述べた事柄に対して具体的な例をあげて説明するときに用いる語。例をあげていえば。「球技例えば野球テニスが好きだ」
多く「ようだ」「ごとし」を伴って、ある事柄を他の事にたとえるときに用いる語。あたかも。「君の勉強は、例えば春の雪のようで、一向に結果が積み重ならない」
ある場合を仮定するときに用いる語。もしも。仮に。「例えばここが外国なら」「これは例えばの話だがね」
てっとり早く言うと。端的に言えば。
「―日本国二人の将軍と言はればや」〈平家・六〉
[類語]擬人たとえ比喩形容象徴比況縮図直喩明喩隠喩暗喩諷喩・寓喩・提喩換喩・声喩・メタファーアレゴリー

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「例えば」の意味・読み・例文・類語

たとえ‐ばたとへ‥【例ば】

  1. 〘 副詞 〙 ( 下二段動詞「たとふ」の未然形「たとへ」に「ば」を伴ったもの )
  2. ( 多く、「ごとし」と呼応して ) 物にたとえていえば。例をあげていえば。
    1. [初出の実例]「僧正遍昭は、哥のさまはえたれども、まことすくなし。たとへば、ゑにかけるをうなをみて、いたづらに心をうごかすがごとし」(出典:古今和歌集(905‐914)仮名序)
  3. 仮定の事柄を例示するのに用いる。いってみれば。手っ取り早くいえば。
    1. [初出の実例]「義仲も東山・北陸両道をしたがへて、今一日も先に平家をせめおとし、たとへば、日本国ふたりの将軍といはればや」(出典:平家物語(13C前)六)
  4. 前の事柄を受けて、それをさらにくわしく述べたり、具体的な例を示したりするときに用いる。くわしくいえば。
    1. [初出の実例]「入道相国、一天四海をたなごころのうちににぎり給ひしあひだ、世のそしりをもはばからず、人の嘲をもかへり見ず、不思議の事をのみし給へり。たとへは、其比都に聞えたる白拍子の上手、祇王祇女とておとといあり」(出典:高野本平家(13C前)一)
  5. 助詞「ば」を伴った条件句に先立って、順接の仮定条件を表わす。もし。仮に。
    1. [初出の実例]「設(タトヘば)事相の中に〈略〉世間悉地を成さば、功唐捐ならじ」(出典:大日経義釈延久承保点(1074)三)
  6. 「とも」「ども」などを伴った条件句に先立って、逆説の仮定条件を表わす。仮に。たとい。よしんば。
    1. [初出の実例]「今行く末は 稲妻の 光の間にも 定めなし たとへば独り ながらへて 過ぎにしばかり 過ぐすとも 夢に夢見る 心ちして 隙行く駒に 異ならじ」(出典:千載和歌集(1187)雑下・一一六〇)

例えばの語誌

( 1 )漢文訓読語系の語で、中古の和文では用例は少ない。「その山は、ここにたとへば、比叡の山を二十ばかり重ね上げたらんほどして」〔伊勢物語‐九〕のように、「ここに」のような修飾語を承けている点でも、「たとへ」に動詞性が感じられ、副詞化しきってはいない。
( 2 )中世に入ると、副詞化が進み、「比喩」表現を導く用法に加えて、「例示」「仮定」「くわしい説明」等の内容を導くような用法の広がりが見られる。近世に入ると、それらは「比喩」「例示」「仮定」にやがて整理され、「仮定」も「例示」の用法に吸収されていく。
( 3 )言文一致以降、殊に大正末期頃から、「例示」の用法が主流となる。

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