訳語(読み)オサ

デジタル大辞泉 「訳語」の意味・読み・例文・類語

おさ〔をさ〕【訳語/通事】

外国語通訳すること。また、その人。通訳。通弁
鞍作福利くらつくりのふくりを以て―とす」〈岩崎本推古紀〉

やく‐ご【訳語】

翻訳に用いる語。また、ある語を訳した別の語。

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精選版 日本国語大辞典 「訳語」の意味・読み・例文・類語

おさをさ【訳語・通事】

  1. 〘 名詞 〙国語を通訳すること。また、その人。通訳。通事(つうじ)
    1. [初出の実例]「大礼小野臣妹子を大唐(もろこし)に遣はす。鞍作福利を以て通事(ヲサ)と為」(出典日本書紀(720)推古一五年七月(岩崎本訓))

訳語の語誌

遣隋使、遣唐使派遣時代の通訳は「をさ」と呼んで、「訳語」「通事」と表記したが、室町時代に新たに遣明使が遣わされるようになると、「通事」を音読した「つうじ」の呼称が用いられるようになった。中世の節用集類にも、「ツウジ」は見られるが、「をさ」は見えない。


やく‐ご【訳語】

  1. 〘 名詞 〙 翻訳するのに用いることば。ある国語を他の国語に訳した語。また、古語現代語に直した語。
    1. [初出の実例]「ノオルト、アメリカ〈略〉番語ノオルト北也。訳語取音与一レ義也」(出典:采覧異言(1713)五)
    2. 「犬学などといふ訳語があるからは」(出典:ヰタ・セクスアリス(1909)〈森鴎外〉)

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改訂新版 世界大百科事典 「訳語」の意味・わかりやすい解説

訳語 (おさ)

古代の通訳。通事とも書く。〈ヲサ〉は古代朝鮮語であろう。大化前代に中国大陸や朝鮮半島諸国との通訳を職掌として世襲する渡来人系氏が生まれ,のちに姓(かばね)としての日佐(おさ)を帯びた。しかし,時代の変化により,これらの氏と異なる訳語・通事が任命され,遣隋使小野妹子には通事鞍作福利(くらつくりのふくり)が随行し,701年(大宝1)任命の遣唐使の大通事には垂水広人(たるみのひろひと)がみえる。また722年(養老6)には,蝦夷隼人征討に訳語がみえている。730年(天平2)に粟田馬養(うまかい)ら5人に弟子を取って訳語を養成させ,761年(天平宝字5)には新羅征討を企図して,美濃・武蔵国の少年たちに新羅語を学ばせた。《延喜式》には大宰府に大唐通事,新羅訳語がみえ,813年(弘仁4)に対馬にも新羅訳語が置かれた。また来朝する渤海使の対応にも訳語が任命され,新羅使・渤海使側の通訳も通事・訳語と呼んだ。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「訳語」の意味・わかりやすい解説

訳語
おさ

古代の官職名、氏(うじ)の一つ。通訳の意で、通事(つうじ)とも書く。また曰佐(おさ)とも書き、その語源は百済など朝鮮諸国の氏姓に由来する古代朝鮮語と考えられる。当初は遣隋使小野妹子(おののいもこ)の通事鞍作福利(くらつくりのふくり)のように、渡来系氏族が登用されたが、次第に留学経験者などで会話に堪能な者が登用されるようになった。初見は『日本書紀』雄略7年是歳条。『延喜式』には遣唐使の訳語・新羅訳語・奄美訳語、遣渤海(ぼっかい)使、遣新羅使の訳語や大・小通事が見える。官職名から氏名に転じた例もあり、曰佐氏は山城国相楽(さがらか)郡、大和国添上(そうのかみ)郡、近江国野洲郡など畿内とその周辺に分布した(『新撰姓氏録(しんせんしょうじろく)』など)。

[森 公章]

『酒寄雅志著「渤海通事の研究」(『渤海と古代の日本』所収・2001・校倉書房)』『榎本淳一著「遣唐使と通訳」(『唐王朝と古代日本』所収・2008・吉川弘文館)』

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普及版 字通 「訳語」の読み・字形・画数・意味

【訳語】やくご

翻訳のことば。

字通「訳」の項目を見る

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