現人神(読み)アラヒトガミ

デジタル大辞泉 「現人神」の意味・読み・例文・類語

あらひと‐がみ【現人神/荒人神】

《この世に人間の姿をして現れた神の意から》天皇の称。あきつかみ。あきつみかみ。
随時、姿を現して、霊験あらたかな神。特に住吉北野の神などをいう。
[類語]天子天皇

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精選版 日本国語大辞典 「現人神」の意味・読み・例文・類語

あらひと‐がみ【現人神・荒人神】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 神が、仮に人の姿となってこの世に現われたもの。天皇をいう。あきつかみ。あらがみ。
    1. [初出の実例]「聖之御子の 天下に 御坐て〈略〉毎皇に 現人神と 成給」(出典:続日本後紀‐嘉祥二年(849)三月庚辰其長歌詞曰〈略〉)
  3. 随時、姿を現わして、霊威を示す神。霊験の著しい神。多く、住吉や北野の神をいう。
    1. [初出の実例]「かけまくも ゆゆしかしこし 住吉(すみのえ)の 荒人神」(出典万葉集(8C後)六・一〇二〇・一〇二一)
    2. 「北野天神荒人神(アラヒトガミ)に成せ給し其の古(いにし)への御悲み」(出典:太平記(14C後)一八)
  4. わざわいをする荒々しい神。また、人にとりつく悪霊
    1. [初出の実例]「浦山しや、むさしは生をもかへでたちまちにあら人神となりたるよな」(出典:幸若・高たち(室町末‐近世初))
    2. 「御まへにて、はら十もんぢにかききり、〈略〉あら人かみとよばれ、まいりげかうの人々お、とってふくす物ならば」(出典:説経節・説経しんとく丸(1648)上)

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改訂新版 世界大百科事典 「現人神」の意味・わかりやすい解説

現人神 (あらひとがみ)

人の姿をとって現れる神を意味し,特に霊威のいちじるしい神についていう。古代では葛城一言主神かつらぎのひとことぬしのかみ)や八幡神(はちまんしん)および航海神である住吉大神がそう呼ばれ,中古以降には菅原道真北野天神)をはじめとする御霊神(ごりようしん)をさすことが多い。後者の場合そのたたりのすさまじさから〈荒人神〉の意も含まれている。天皇もまた現人神とされたが,天皇には〈明(現)神(あきつかみ)/(あきつみかみ)〉が公式の称号として多く用いられた。
御霊(ごりょう)信仰
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「現人神」の意味・わかりやすい解説

現人神
あらひとがみ

人の姿をした神の意。『日本書紀』の景行(けいこう)天皇の条には、日本武尊(やまとたけるのみこと)が「吾是現人神之子也」といわれたとある。明御神(あきつみかみ)の類語。普通、天皇をさすが、天皇以外に用いられることもある。自ら現人神であると名のった奈良県葛城(かつらぎ)山の一言主神(ひとことぬしのかみ)や、住吉(すみよし)神を荒人神(あらひとがみ)とよんだ例などがある。

[大原康男]

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旺文社日本史事典 三訂版 「現人神」の解説

現人神
あらひとがみ

神格化された天皇
天皇は人間でなく神であるとする思想で,天武・持統天皇治世期に生まれ,『万葉集』にも「大君は神にしませば……」と歌われている。明治維新以降,国家神道,教育勅語などで天皇の神性がいっそう強調され,敗戦まで続いた。戦後の1946年天皇みずから「人間宣言」を発して神格を否定した。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「現人神」の意味・わかりやすい解説

現人神
あらひとがみ

明津御神ともいう。人の姿となってこの世に現れる神としての天皇の称。また非業の死をとげ,神として現れる人をもいう。

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世界大百科事典(旧版)内の現人神の言及

【人神】より

…シャーマンの場合,一時的に人神に化しても,しばらくすると元の人間に戻っている。それに対して,恒久的に神化した概念とされるのが現人神(あらひとがみ)である。これは神霊を体現した人という意味であるが,しばしば強烈な霊の保持者に対する尊称として使用されていた。…

※「現人神」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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