平凡(二葉亭四迷の小説)(読み)へいぼん

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

平凡(二葉亭四迷の小説)
へいぼん

二葉亭四迷(しめい)の長編小説。1907年(明治40)10~12月『東京朝日新聞』連載。翌年、文淵堂(ぶんえんどう)・如山堂(じょざんどう)刊。元文士でいまは下級官吏の古屋雪江(ふるやせっこう)が半生懺悔(ざんげ)する告白体の物語で、彼が愛犬ポチに対して無私の愛をもちえた少年時代から、「空想」を生命とする文学の毒にあてられて堕落し、父の死を契機に「実感」を取り戻して「平凡」な生活に入るまでの過程をいくつかのエピソードをつないで描く。それを通じて二葉亭晩年の人生や文学に対する懐疑が表され、当時流行の自然主義文学が風刺されている。

[十川信介]

『『平凡』(新潮文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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