安い(読み)ヤスイ

デジタル大辞泉 「安い」の意味・読み・例文・類語

やす・い【安い】

[形][文]やす・し[ク]
(「廉い」とも書く)他に比べて、また普通より値段が低い。安価である。「―・い買物」「―・くあがる」「給料が―・い」⇔高い
価値がない。軽々しい。「―・く見られる」
心がおだやかである。落ち着いている。
「西からの戦報を手にするたびに―・い心はなかった」〈藤村夜明け前
(「やすくない」の形で)男女の間が親密なさま。また、それをひやかしていう語。「二人でお出掛けとは―・くない話だね」→お安い
責任がない。気楽である。
京中上下―・き口にはささやきけり」〈盛衰記二三
[派生]やすさ[名]
[類語](1低廉安価廉価安直あんちょく安上がり割安格安徳用安値安め

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「安い」の意味・読み・例文・類語

やす・い【安・易】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙
    [ 文語形 ]やす・し 〘 形容詞ク活用 〙
  2. 物事のなりゆきに障害や不安がない。平穏である。安心していられる。
    1. [初出の実例]「下問ひに 我が問ふ妹を 下泣きに 我が泣く妻を 今夜(こぞ)こそは 夜須久(ヤスク)肌触れ」(出典古事記(712)下・歌謡)
    2. 「同じ程、それより下臈の更衣たちはましてやすからず」(出典:源氏物語(1001‐14頃)桐壺)
  3. らくらくと物事を行なうことができる。容易である。たやすい。
    1. [初出の実例]「産腹(はら)(ヤスキ)(ひと)は、褌(はかま)を以て体(み)に触(かから)ふに」(出典:日本書紀(720)雄略元年三月(前田本訓))
  4. 責任が軽く自由である。気楽である。
    1. [初出の実例]「心にまかせて身をやすくもふるまはれず」(出典:源氏物語(1001‐14頃)橋姫)
  5. ( 「廉」とも書く ) 値段が高くなく、金がかからない。他と比べて、質や量のわりに値段が低い。低廉である。安価である。⇔高い
    1. [初出の実例]「価ひ復た最も賤(ヤスカラ)む」(出典:蘇悉地羯羅経延喜九年点(909))
  6. 格が低い。身分が低い。品質が劣っている。〔観智院本名義抄(1241)〕
    1. [初出の実例]「浅黄に黒羽織きる人に、草り取のなきは〈略〉やすう見へける」(出典:浮世草子・傾城色三味線(1701)大坂)
  7. 粗末にあつかうようである。みくびるようである。
    1. [初出の実例]「お家に由緒ある数代出入の町人でも、不如意になれば安くあしらひ」(出典:滑稽本・風来六部集(1780)放屁論後編)
  8. 人品などが下卑(げび)ている。下品である。〔新撰大阪詞大全(1841)〕
  9. ( 動詞の連用形に付いて、その動作が容易に行なわれる意を添える。の形式化したもの ) たやすくそうなる傾向がある。簡単に…する。らくに…できる。
    1. [初出の実例]「つき草の移ろひ安久(やすク)思へかも我が思ふ人の言(こと)も告げ来ぬ」(出典:万葉集(8C後)四・五八三)
    2. 「あなづりやすき人ならば後にとてもやりつべけれど」(出典:枕草子(10C終)二八)
  10. やすくない(安無)

安いの派生語

やす‐げ
  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙

安いの派生語

やす‐さ
  1. 〘 名詞 〙

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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